英語は錆びるか?

英語を使わないでいると錆びてしまうのではないか、これは海外留学を終えつつある人などに良くある疑問です。答えから先に言いますと、間違いなく錆びます。

  • おもしろい経験をしたことがあります。タイランドで仕事を終え、空港のラウンジでくつろいでいるときにそれは始まりました。ビジネスクラスのラウンジには、言っては失礼ですが、似つかわない質素(?)な身なりのタイ人風の老人が一人座っていました。彼はにこにこしながら周りの人に話しかけるのですが、タイ語のようでタイ語でないような言葉です。みんながいぶかしがりましたが、そうこうしているうちに搭乗の時間となりました。
  • まあ、ぎりぎりの搭乗でいいか、と思いゆっくり機内に入って席に着こうとした途端、私の目に入ってきたのは私のシートの隣に座っている先ほどの変な老人でした。正直、参ったなぁと思いましたが仕方ありません。案の定、私が席に着くやいなや話しかけてきます。
  • ところが何を言っているのか殆ど分かりません。タイ語のようでタイ語でもなく、タイ東北部のいわゆるイサン語でも無いようです。しょうがないので英語で「Do you speak English?」と聞いてみますが分からない素振り。
  • 辛抱強く聞いているうちに私は気がつきました。彼がしゃべっていたのは、なんと日本語でした。なんでも40年前に(30才半ば)にタイに移り住み、それ以来一回も日本に帰ったこともなく現在に至っているそうです。今回は親類の招きで40年ぶりに日本を訪れることになったそうです。ちなみに彼はどうしても「年」という日本語が思い出せないらしく、「しィじゅうピー」と繰り返していました。「ピー」はタイ語では声調によって、お化け・年配の人への呼称・年などの複数の意味を持つ単語です。普通の日本人が聞いたらまず通じません。
  • これはとても極端な例ですが、日本人として30年あまり母国で暮らしていても、つかわないでいると母国語でもこれだけ言語は錆びてしまうのです。日本人が最初は殆ど分からないほど錆びてしまうのです。我々の第二言語が錆びないわけがありません。
  • 少し具体的にお話ししましょう。例えば、3級前半(TOEICで言うと700点くらい)までの英語力でしたら、原型をとどめないくらい跡形もなく錆びてしまいます。まだ英語のロジックも殆ど分かっておらず、機械的に覚えたルールや語彙に頼っている時期です。数年もすれば殆ど元に戻ってしまいます。
  • では2級・1級(TOEICでは800から900 overの人)は錆びないか、といえばスピードこそ遅いもののじわじわと錆びていきます。
  • しかし錆び方が少し違うように思います。次のページで少し例を挙げて説明してみましょう。